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メディア等で「月3km」の道路案内板写真を見たことはありませんか?
この案内板があるのは浜松市天竜区。天竜川の流れと沿うように走る静岡県道360号線に立っています。
さて、この月にはいったい何があるのでしょうか。地名の由来も気になりますよね。
今回はそれらの謎を解き明かすべく、月までプチ旅行をしてきました。
目次
数年前に一躍脚光を浴びた「月3km」の道路案内板が立っているのは静岡県道360号線。
天竜浜名湖鉄道の天竜二俣駅から国道152号線を5キロほど北上し、最初のトンネル「船明隧道」手前を左に曲がった先です。
国道を走る車は多く見られますが、この県道へ逸れる車は滅多にいません。それだけ静かな場所なんです。
「月3km」の道路案内看板を通り過ぎると間もなく赤い伊砂(いすか)橋が見えてきます。月へはこの橋を渡ったら右折しましょう。いよいよ月旅行の始まりです!
こちらは天竜ボート場伊砂ボートパークの入り口となる、天竜ふれあいバスの「伊砂上」バス停を通り過ぎてしばらく進んだあたりからの風景です。
深い緑の木立が周囲を包み、その中を天竜川がゆったりと流れます。
道の奥に白い建物が見え始めたら、それは月が近付いてきた証拠。建物の正体は着いてからの楽しみに。
この場所はレガッタ等ボート競技のゴール地点が近いことから、岸辺近くに白い屋根付きの監視台が立っています。
いくつものカーブを通り過ぎ、急に視界が開けたら月に到着です。この地名の由来ですが、地区の南端にある石碑には2つの伝説が刻まれていました。
まず1つ目は、南北朝時代に楠氏に仕えた源氏の一族・鈴木左京之進の言葉による伝説です。
そして2つ目は「今宵纔是半釣影待到仲秋是十是」の古詩に因み、「今はわずか十二人の半釣であるが、やがて満月のように発展することを願って月とつけた」という伝説です。
どちらの伝説もロマンティックですね。
月地区は天竜川に注ぐ谷沢川に沿いに営まれています。
その谷沢川に架かる橋は、その名も「月橋」! 橋のたもとには名前が書かれたプレートが嵌め込まれています。
月橋を渡る手前には県道360号線の標識と「浜松市月」の文字が。
その後ろには月橋の案内板もあります。月地区の中で一番「月」の名前が集中しているのは、このあたりなんですよ。
「月には地名の由来碑と月橋のほかに、何があるの?」と気になる方もいますよね。それはずばりボート場です。
ここへ来るまでの間、ずっと道路に沿うように流れていたのは天竜川…なんですが、その川の流れの中でもこのあたり一帯は船明ダムのダム湖なんです。
船明ダムは天竜川水系の最下流にあり、ダム湖は下流から遡った場合、伊砂橋と伊砂ボートパーク付近で大きく湾曲するくらいで、あとはほぼ真っすぐ。
そこでこのダム湖を利用し、ボートの競技場ができました。
コースの長さは直線で2000メートル。日本の国土事情からすると、これは国内ではとても珍しいんです。
艇庫(ていこ)とはボートを入れておく倉庫のこと。この日は休日だったことからか、ちょうど艇庫の扉が開いていました。
この船明ダム湖は、都市部に比較的近い大河川の最下流ダム湖です。
船明ダムを含め、天竜川下流域のダム3つを電源開発が管理し一体的に運用しているため、安定した水量を保っています。
湖面に波が立つことも少なく、直線で2000メートルのコースが取れる。ここはまさにボート競技にはもってこいの場所なんです。
月は2000メートルコースのほぼ中央付近にあたります。
天竜ボート場は、毎年3月に行われる全国高等学校選抜ボート大会の会場となっています。会期はちょうど春分の日前後の3日間。いつもは静かな月地区も、この大会開催期間中は高校生たちで賑わいます。
一見すると湖畔に降りる階段も、この時は観客席に変身。
月艇庫の奥には「天竜自然体験センター 湖畔の家」が建っています。湖畔の家には宿泊棟や食堂棟などがあり、学生たちの合宿などでの利用が多いそう。
一般客の利用もできますが、立地等から通常の食堂業務はしていません。「月でお月見御膳を食べたい!」という方は、10名以上で2週間前までに事前予約をしてくださいね。
月の集落は天竜川のほとりから山すそへ向かい、細長い二等辺三角形のように伸びています。ボート場の利用者がいない時は、本当にひっそりとした静かな土地です。
耳を澄ませば聞こえるのは、鳥のさえずりや木々の間を渡る風の音。あちこちにベンチがあるので、都会の喧騒から離れて束の間の休息タイムにも良いですね。
月地区へのアクセス方法ですが、自動車の場合、新東名高速道路「浜松浜北IC」から国道152号線~静岡県道360号線経由で30分かからない程度です。
公共交通機関を利用する場合は、呼び出し式のデマンドバス(天竜ふれあいバス)になります(2022年5月現在 / 要・事前予約)。
ただ、このバスは地元住民以外には使い勝手があまりよくないんですよね。
そこでおすすめなのが、月から一番近い鉄道駅・天竜浜名湖鉄道の天竜二俣駅にあるレンタサイクル(有料)です。
レンタサイクルは普通自転車と電動自転車の2種類で、貸出時間は9:00~16:00まで。駅から月までの距離は約8.8キロ、30分程度で到着します。
最後に地名の由来をもうひとつ。
地形から推測すると、ツキはツカと同じように「小高い所」を指す言葉とされ、台地や砂丘などに多いそうです。
ダム湖ができる前の月地区は、もっと高台だったのかもしれませんね。
地名の由来を自分自身で確かめたり、湖畔に憩いの場を求めたり。「月3km」の先へ出掛けてみませんか?
(文・写真:麻生のりこ)
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