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浜松市南区。日本三大砂丘の一つとも言われている広大な中田島砂丘の先には、遠州灘が広がる。春には近くの公園で浜松最大イベントである浜松まつりが行われ、多くの市民に馴染みのあるこの海岸に、毎年アカウミガメが産卵にやってくる。そう、ここは私たちのふるさとでもあり、ウミガメのふるさとでもあるのだ。
この海岸に毎年5月から8月に産卵をしにやってくるのはアカウミガメ。全長1m以上、体重100kg以上の大きな体で、夜に海岸へ上陸し産卵場所を探す。大きな前足を使って砂をかき分け、後ろ足で穴を掘り、卵を産み落としていく。アカウミガメの目の横にある塩類腺と呼ばれる場所は、体内の塩分濃度を調節する器官で、体内の塩分が粘液と一緒に排出されるため、産卵する際にまるで涙を流しているかのように見えるそうだ。まさに神秘の産卵。産卵を終えた親ガメは卵を砂で隠し、朝の遠州灘に足あとを残しながら、子どもたちの顔を見ずにまた海へ戻っていく。
親ガメは1回に120個ほど、3〜5回、1頭が500個近くの卵を産む。産卵後60日程度で孵化した子ガメは、産まれてすぐ鳥に食べられたり、海に入ってからすぐにサメなどの大型生物に食べられたり生存率が低い。このような生存率の低い動物は卵を多く産むそうだ。子ガメはその後、黒潮に乗って遥か彼方のメキシコ沖まで行き、また赤道付近を横断して日本近海へ戻ってくる。その年月は約20年。子ガメは遠州灘を出てから長い長い旅を始める。
カメの生命を脅かすのは鳥やサメなど自然界の生き物だけではない。悲しいことに、その犯人には私たち人間も含まれる。
近年、ペットや食用として業者に販売するため、卵を盗む人がいるという。カメの卵や親ガメは、密猟されることで数が減少し、現在では、国際的保護動物であり絶滅危惧種になっている。
それだけではない。中田島砂丘には一昔前には見なかったほどのゴミが散乱している。特に目につくのはプラスチックごみだ。この人間が出したゴミたちが海に生きる生物を脅かしているのだ。
また、通常子ガメは産まれた後、紫外線に向かって歩いて行くため、夜の街のLEDの光や蛍光灯などの街灯りがあると海へ帰って行くことができないそうだ。その他にも海岸を車で走る人が作る轍で、海に帰れなくなる事もあるそうだ。
中田島砂丘に設置した保護柵で、孵化した子ガメを海へ放流する体験を行なっているサンクチュアリエヌピーオーという団体がある。この団体は、ウミガメの絶滅を防ぐための産卵調査や卵の保護を始めとし、ウェルカメクリーン作戦などのゴミの問題にも向き合い、この豊かな自然を守るための活動を34年前から行っている。
子ガメの放流体験の際には、まず中田島砂丘の入り口にあるサンクチュアリネイチャーセンターで、ウミガメとウミガメを取り巻く自然環境についてレクチャーを受け受けてから浜辺へ向かう。
波の音を聞きながら砂浜を歩き保護柵に到着。柵の中から出してもらった産まれたばかりの子ガメの甲羅を恐る恐る持つと、手足をパタパタさせて可愛い姿を見せてくれた。たくさんいるこの子たちの中から何匹がまた20年後に戻ってきてくれるのだろう…複雑な気持ちが入り混じる。
子ガメを手にして波打ち際にそっと置くと、小さな手足を動かし、ただひたすら波に向かって進んでいく。押し寄せる波にのまれたと思えば引き戻され、あと少し、あー!また戻されちゃった!あれ、疲れたのかな、動かない…そんなやり取りを何度も繰り返し、1匹、2匹と荒波の中に旅立って行く姿を見守る。
この日は5匹、無事、海へ入って行くのを見送った。産まれてすぐに荒波に旅立って行く姿に、思わず涙する人や「頑張れ、頑張れ!」と応援する人もいた。自然界では当たり前のことかもしれないが、人間とは違う過酷な環境にとても考えさせられるものがある。参加者全員が子ガメを見送り、駐車場に戻る頃にはたくさんのゴミを拾っていた。
現在、絶滅危惧種であるこのアカウミガメの産卵や子ガメを保護して定期的に一定数、一般に公開している場所は本州の中でここしかないそうだ。ウミガメのふるさと、私たちのふるさとを守るために、ぜひ一度、足を運んでいただくことをおすすめしたい。
編集部:河野 美奈子
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