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浜松市博物館「小さなグランドピアノ」が奏でる楽器産業の歴史

2024.06.14

 

浜松市博物館が所有する「4尺ピアノ」は、1930年代に製造された小さなグランドピアノです。その小型でかわいらしい姿と美しい音色は、浜松市の楽器産業の歴史を物語る貴重な存在です。

 

約90年という長い年月を経てもなお、当時の姿のまま保存されている小さなグランドピアノには、数々のドラマが秘められています。

 

今回は、浜松市博物館の館長・鈴木 一有さんと学芸員・橋本 充悠さんに、この小さなグランドピアノが誕生した背景と、そこに見られる浜松の楽器産業の歴史についてお話を伺いました。

 

浜松市博物館に遺された「小さなグランドピアノ」

 

(左:浜松市博物館 鈴木館長、右:学芸員 橋本さん)

 

「4尺ピアノ」は、1930年代後半に製造された小さなグランドピアノです。

 

奥行きがわずか4尺(約120cm)しかないこの小さなグランドピアノは、設計者であるピアノ製造技師・大橋幡岩(おおはし はたいわ)氏の工房で長期間、大切に保存されてきました。

 

2012年に浜松市博物館に寄贈されましたが、製造から約90年を経た現在でも、驚くべきことに演奏可能な状態を保っています。

 

 

「ピアノがこれほど長期間、良好な状態を保っているのは、大橋氏の工房での丁寧な管理とメンテナンスのおかげではないでしょうか」と鈴木館長は語ります。

 

小さなグランドピアノの生みの親・大橋幡岩

このピアノを設計した大橋幡岩氏は、静岡県磐田市出身のピアノ製造技師です。

 

13歳の時に日本楽器製造株式会社(現・ヤマハ株式会社)に入社し、ピアノ技術者の始祖といわれる山葉直吉の弟子となりました。以降、生涯にわたってピアノ設計や製造に従事してきました。

 

小さなグランドピアノが誕生した1930年代は、浜松で楽器産業が急速に発展していた時期です。そのような時代のなか、大橋氏は小さなグランドピアノの開発に乗り出します。

 

小さなグランドピアノが誕生した背景

1930年代は、大衆文化が盛んに発展していった時期です。

 

楽器産業の中心地であった浜松では、さまざまな技術革新が活発に行われていました。その1つが、この小さなグランドピアノの開発です。

 

大型のグランドピアノは演奏会用としては理想的でしたが、一般家庭には適していませんでした。そこで、家庭で音楽文化を楽しむための製品として、小さなグランドピアノを開発しようという動きがあったのです。

 

こうした時代の潮流のなか、ピアノ製造技師であった大橋氏は、多くの試行錯誤を重ね、コンパクトでありながら豊かな音色を持つ小さなグランドピアノ「4尺ピアノ」を設計しました。

 

この小さなグランドピアノは、当時の音楽産業の技術革新を象徴する存在でもあります。

 

 

しかし、このピアノが製造された期間は短く、第二次世界大戦の始まりや時代の流れと共に製造は終了してしまいました。

 

小さなグランドピアノは、現存しているもの自体が非常に少ないため、日本国内で展示されているのは数十台程度だそうです。

 

「そもそも『小さな家庭用グランドピアノを開発しよう』という流れが、あと数年遅れていたら、こういった変わった製品は生まれなかったかもしれませんね」と鈴木館長は語ります。

 

博物館だからこそ伝えられる「小さなグランドピアノ」の意義

初めて浜松市博物館を訪れた方は「なぜ、博物館にピアノがあるの?」と不思議に思うかもしれません。

 

浜松市博物館は、地域の歴史と文化を伝える役割を担っています。楽器産業は浜松の重要な産業の1つであり、その歴史を語ることは浜松のアイデンティティを理解する上で欠かせないものなのです。

 

 

「この小さなグランドピアノは、楽器としての希少性はもちろんですが、浜松市の産業技術の歴史を紐解くうえで、非常に重要な意味があると考えています」と鈴木館長は語ります。

 

「浜松の楽器産業は、地元の人々の支えと協力によって成り立ってきました。このピアノは、その象徴的な存在です」という鈴木館長の言葉のとおり、今でも浜松には100社を超える大小さまざまな楽器関連企業が存在しています。

 

楽器製作には多くの職人や技術者が関わり、その一つひとつの努力が結集して1つの楽器が完成します。「音楽のまち・浜松」「ものづくりのまち・浜松」には、楽器製造に関してオンリーワンの技術を持つ小さな会社も少なくありません。

 

ぜひみなさんも、浜松市博物館で小さなグランドピアノを見ながら、こうした浜松の『らしさ』に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

 

2024年7月6日(土)開催「小さなグランドピアノ 幻の音色」

今回ご紹介した浜松市博物館の「小さなグランドピアノ」の音色を楽しめるイベントが開催されます!

 

 

本イベントでは、ピアノ奏者・森山雪子さんによる小さなグランドピアノの演奏をお楽しみいただきながら、その歴史的な背景や楽器としての希少性を紐解いていきます。

 

1台のグランドピアノを中心に、さまざまな角度から背景に眠るドラマを知る。

 

そんな新しい博物館の楽しみ方を体験してみませんか?

 

【イベント詳細】
日時:2024年 7月 6日(土) 17:30~19:30(会場17:00)
場所:浜松市博物館(浜松市中央区蜆塚4丁目22-1)
料金:1,500円
定員:80名(事前予約制)

 

演奏:森山 雪子(癒しの音色~森といずみ~)
MC:内田 順子(フリーアナウンサー/元テレビ静岡アナウンサー)
講師:鶴田 雅之(浜松市楽器博物館 館長)
   鈴木 一有(浜松市博物館 館長)
   橋本 充悠(浜松市博物館 学芸員)

 

ご予約・お申し込みはこちら
↓↓↓
https://hamamatsu-daisuki.net/hamanako-choitabi/3857/

 

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「音楽のまち、浜松」の原点 -地場の楽器産業創成期と会員8社の創業者伝-
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静岡県楽器製造協会公式YouTubeチャンネル
静岡県楽器製造協会が運営するYouTubeチャンネルで、楽器製造に関する様々な動画を見ることができます。

 

浜松市博物館 施設情報

住所:
〒432-8018
浜松市中央区蜆塚四丁目22-1

 

電話番号:
053-456-2208

 

開館時間:
午前9時~午後5時

 

休館日:
月曜日(休日の場合は開館)・祝日の翌日
年末年始(12月29日~1月3日)

臨時休館日もありますので、休館日情報もしくは「博物館カレンダー」でご確認ください。

 

観覧料:
常設展(特別展期間は別料金)
大人310円/高校生150円/小中学生無料
団体割引有
観覧料の詳細

 

公式HP:
浜松市博物館

 


 

(文):戸塚 尚子
(写真):戸塚 尚子

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