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浜北区にある万葉の森公園では、年4回(おおよそ3か月に一度)、万葉草木染め体験を開催。
園内にある伎倍 の工房で、紅花や藍、茜など万葉集に登場する植物を利用した、板締め染めや絞り染めが楽しめます。
今回ご紹介するのは、馬酔木 の葉を使ったシルクシフォン染め。み機工房のみき先生に教わりながら、3種類の媒染液を用いたオリジナルストール作りに挑戦しました!
体験時間は約2時間。草木染めが初めての方でも、気軽に参加できます。
目次
伎倍(きべ)の工房
JR浜松駅から北へ約11キロ。
万葉の森公園内にある「伎倍 の工房」では、年4回(おおよそ3ヶ月に一度)、園内で見られる花や剪定した枝葉等を活かした万葉草木染めを体験できます。
教えてくれるのは、2019年から同工房で染色体験会を実施している、み機工房のみき先生です。
染色方法や布(生地)への模様の出し方、染材となる植物についてなどを丁寧に教えてくれるので、初心者の方も安心。
左:紅花(6月撮影)、右:藍(8月撮影)
染色材料は紅花や藍、桜や栗などさまざま。布につける模様は体験参加者が各自で行うため、オリジナルの一枚ができるんです。
とはいえ、「草木染めに興味はあるけど、なにを用意していいのか分からないし準備も大変そう…」と思う方もいますよね。
当日は参加費(2,500円・染料代、布代込み)のほか、エプロンと手袋、タオルを持参すればOK。メモを取りたい方は筆記用具も。
手袋は染液(染色液)に浸けた布を絞る際に使うので、ゴム手袋やビニール手袋がお勧めです。染液や媒染液(布へ染めた色を定着させる液体)、布はすべて準備されています。
左上:板締めの道具、右上:板締めしている様子、左下:絞り染めに使用する輪ゴム、右下:輪ゴムで絞った様子
体験できる草木染めの技法は奈良時代の三大染色法・三纈のなかの2つ、板締め染め(夾纈)と絞り締め(纐纈)です。
夾纈は板と板の間に染める生地をきつく挟み込むことによって、そして纐纈は生地を絞ったり縫ったりすることによって生地の色を残したい部分が染まらないようにします。
なお、三纈の残りのひとつは、ろうけつ染め(臈纈 )です。
左:紅花(黄水で染色)、中央:紅花(通常の染色)、右:桜の樹皮(いずれも筆者が染色)
上の画像は、筆者が2022年に万葉草木染め体験をした際、紅花と桜で染めたものです。
紅花で染めるとピンクや紅色に染まるイメージがありますよね。けれど、通常は捨ててしまう最初の色水(黄水)で染めると、このような黄色に染まるんですよ。
2021年には海の湖HAMANAジェンヌの2人(高橋ジェンヌと遊佐ジェンヌ)も紅花染め体験をしました。
YouTubeチャンネル「ジェンヌちゃんねる」でも紹介中です▼
左上の丸囲みの中:馬酔木の花
今回の染材・ 馬酔木は、3~5月にかけて小さな壺状の花を咲かせる常緑性の低木で、有毒成分が含まれています。馬酔木染めでは葉を煮出して抽出し、取り出した色素を染液として使います。
葉は緑色なのに染液はご覧のように赤褐色。ただこの染液は3日前に抽出したもので、抽出したての染液は飴色になるそう。
染液に浸けただけのものや、染液+媒染したものなど、色の違いが分かりやすい
媒染回数を変えた染色見本
工房内のテーブルには、馬酔木で染めたストールなどが見本として並んでいます。
抽出したての染液に浸けただけのものと媒染を経たものとの、色の相違が分かりますね。
染める生地(シルクシフォンスカーフ)
染める布は、ふわっと軽く透け感のあるシルクシフォン。長さは1メートル以上あります。
薄い生地のため今回は板締め(夾纈)はせず、絞り染め(纐纈)で模様をつけます。
みき先生による絞り方レクチャー(左:紐を使った絞り方、右:生地の手繰り方)
実際に布を染液へ浸ける前に、みき先生が染色方法や布の絞り方などを教えてくれます。
中央:すでに煮出し済みの染液(左下:馬酔木の葉)
それでは、染めてみましょう!
染液はすでに適温(80℃)になっているので、あとは布を浸けて染めるだけです。
輪ゴムや紐で絞った部分は染液が入り込まず白く残るので、それらを考慮して輪ゴムや紐で絞ります。
布をつまみ、その少し下を輪ゴムで絞ったり、くしゃくしゃっと手繰り寄せてから輪ゴムや紐で絞ったり。模様のつけ方はあなた次第。いろいろと試してみて!
次に、染め上がりが色むらにならないよう、絞り終えた布を真水に浸けます。
水に浸けた布を絞り、染液にしっかりと浸けます。
浸ける時間は20分間。この間、布全体が染まるように箸をまんべんなく動かましょう。
疑問点等は、みき先生のアドバイスを受けて解消
「このような染め上がりにしたい」等の希望や疑問点へは、みき先生が適宜アドバイスをしてくれます。
左上:染液から布を取り出す、右上:布を両手で押さえて、よく水気を切る、左下:布をミョウバン(媒染液)に浸ける、右下:真水の入ったボウルで、しっかりと布を洗う
20分後、染液から布を取り出し、両手で押さえてよく水気を切ります。取り出した布は少し熱いので、お気をつけください。
その後、染めた色が定着するように媒染液に10分浸けます。
草木染め時の主な媒染は、アルミ媒染とアルカリ媒染と鉄媒染です。今回用いる媒染は、この3種類すべてを順に浸けます。最終的にどのように染まるか楽しみですね。
最初の媒染液はミョウバン(アルミ媒染)です。10分後に媒染液から布を取り出したら、真水の入ったボウルで、しっかりと洗います。
洗い終えたら布を絞り、再度、染液へ。2回目に染液へ浸ける時間も最初と同じ20分間です。
熱心に聞き入る体験参加者一同(右側の植物が馬酔木)
万葉草木染め体験では、2回目に染液へ浸ける時間等を利用して、万葉の森公園スタッフによる染材植物についてのガイドが行われます。
今回の染材・馬酔木は公園内のあちこちで見られ、その中には傍らに万葉歌碑
“磯の上に、生ふる馬酔木を、手折らめど、見すべき君が、ありと言はなくに”
が立つものも。
歌碑に刻まれた万葉歌は、飛鳥時代に大来皇女(大伯皇女)が、皇位継承争いに巻き込まれ謀反の疑いで処刑された弟・大津皇子を偲んで詠んだ歌です。
茜(草木染めには根を使用)
公園内では馬酔木以外にも茜や紫、紅花など草木染めの染材となる植物を見ることができます。
紫(草木染めには根を使用)
馬酔木染めをした時は、ちょうど紫の開花時期。茜や紫は葉ではなく、根から染料を取り出します。
根に色素が含まれているなんて、不思議だと思いませんか?
左上:ミョウバン(媒染液)に浸ける(2回目)、右上:灰汁(アク・媒染液)に浸ける、左下:真水で洗う、右下:鉄(媒染液)に浸ける
工房に戻ったら染液から布を取り出し絞り、再度ミョウバンへ10分間。
均一な染め上がりにするため布全体を浸けたり、グラデーションにするため布の一部分だけを浸けたり。この時、自分が染め上げたいような仕上がりになるように浸けるのがポイントです。
ミョウバンへ浸けた後はボウルから取り出し真水で洗い水気を切り、2種類目の媒染液へ10分間。2種類目の媒染液はアク(灰汁・アルカリ媒染)です。
ミョウバン媒染の上にアク媒染を重ねると、黄色みが増すんですよ。
アクへ浸けた後、もう一度真水で洗い水気を切ったら最後の媒染液へ。3種類目の媒染液は鉄(鉄媒染)です。
浸透圧で変わる布の色に注目!
鉄媒染をすると暗めの色に。
アクも鉄も浸透圧でどんどん吸い上がります。馬酔木の染液で染め、ミョウバンの媒染液に浸けた布の色が変化する様子を見ながら調整してくださいね。
鉄媒染が終わり、最後にしっかりと水洗いを済ませれば完成です。工房の軒先スペースに干しましょう。
上の画像で、左から2枚目と3枚目を染めた方それぞれに模様のつけ方を伺ったところ、2人とも「先生のお手本を見ながら、くしゃくしゃっと絞ったらできた」そう。
同じように絞っても、媒染液への浸け方などで染め上がりの異なるスカーフになったんですね。
この絞り方、いいなあ。次回、万葉草木染め体験へ参加した時に真似してみようっと。
薄くて柔らかなシルクシフォンスカーフから、工房前の樹木が透けて見える
紅花、クチナシ、藍に橡…。
万葉時代(飛鳥~奈良時代)の人々は、身近な植物から取り出した天然色素で布を染めていました。
天然色素のなかには、紅花のように鮮やかに染まるものもあれば、落ち着いた色に染まるものもあります。
絞り方や染め方次第で、染め上がりも自由自在。
手間がかかる分だけ愛おしい。
万葉草木染め体験で、オリジナルの一枚を!
万葉の森公園の公式サイト(外部リンク)
み機工房のFacebook(外部リンク)
(文・写真:麻生のりこ)
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