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肴町でうまい魚を。魚魚一が誇る「うなぎの刺身」と浜松の外食文化

2021.12.02

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 「浜松の人は地元の産業や文化について、卑下するというか、割と遠慮がちに話しますよね。」

 京都の一流料亭での修行中に、海老芋や鰻、浜名湖のしんこ、鱧、デザートのメロン、遠州や浜松産の材料が、たくさん使われていることに驚き、外から地元の魅力を認識したという『魚魚一』(とといち)店主の仲村健太郎さん。

 東京や京都に出荷され、地元では積極的に消費されていない食材の中でも、とりわけ鮮度が味に影響する魚介類に着目します。

 「魚が食べたい時に、寿司屋しかお店の選択肢がないのがもったいない気がして、浜松で魚にこだわった店を開こうと思いました。」

 

変化の激しい飲食業界。魚へこだわり続けた20年

 

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 浜名湖や遠州灘で水揚げされる、新鮮な魚料理の専門店『魚魚一』が、浜松に店を構えて今年で20年になります。

 浜松市・肴町は当時、ハイブランドも並ぶファッションの通り。東京で流行りだした和風モダンのおしゃれな店にあこがれ、飲食店向きの街ではなかったのですが、少し大人な印象の肴町に店を構えることに。

 「3Fにある店舗への集客は難しい。」「魚料理だけで成功するはずがない。」と、多くの人に開業を疑問視される中、誰も踏み入れていない新しいビルの、まっすぐに伸びる階段に惹かれ、根拠のない自信と反骨心でお店をスタートさせました。

 個室もあるしつらえで、街中にいながら高級料亭のような気分も味わえる造作。和食だけどお洒落で、お酒も楽しめる店として注目されます。

 何でもある店が喜ばれる時代から、何かを食べたくて店を選ぶ専門店の流れへと消費行動も変化し、街の様子も移ろいますが、変わらぬ信念と地元食材の魅力を発信する努力で、歳月を刻んでいます。

 

名物『うなぎの刺身』はこうして生まれた

 

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 「常軌を逸した気狂いの発想だったと思います。」

 全国にPR出来る浜松の食を、和洋中を問わずプロフェッショナル達が考案する企画で、仲村さんが閃いたのは、うなぎを刺身にして提供するというアイデアでした。

 県外のお客さんに浜松のイメージを聞くと、一番多かった答えはやっぱり『うなぎ』。

 数多ある魚の中でも、「うなぎは鰻屋専門のもの」と考えられていたので、これまでは店で扱ってはいませんでしたが、「うなぎのコースに刺身がないのはなぜ?」という疑問から、生きて泳いでいる魚ならすべからく刺身になるはずと、試行錯誤の末、職人ならではの血抜きの技で出来上がったのが『うなぎの刺身』です。

 しっかりと弾力のある歯ごたえ。自家製熟成ポン酢と合わせる甘みのある脂。浜松が誇るうなぎの新たな味覚は、ふじのくに新商品セレクション金賞に選ばれ、浜松パワーフードとしても名を馳せています。

 

浜松の地で、一人前の料理人を育てたい

 

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 魚魚一の特徴のひとつに、学生アルバイトに頼らず、専門性と責任を持った社員としてスタッフを雇用する仲村さんのポリシーがあります。

 お店の接客サービスは人が賄うものなので、お客様とのコミュニケーションにプロとして対応できるよう心掛けているそうです。

 仲村さんのもとで修業し、これまでに独立開業を果たした職人も多くいますが、過去には「独立希望のスタッフを、どこに出ても恥ずかしくないように育てなければ」と、厳しく接したことが裏目にでてしまい、従業員が急に来なくなって店を一時閉めた苦い経験も。

 それでも「料理を通じて会話のできる人を。うちに来た子は必ず成功させる」と、信念をもって講師業や職人の育成に取り組んでいます。

 

魚料理とお酒が織りなす、豊かな外食文化

 

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 「コロナ禍でお酒の提供が出来ない期間は、お客様が食事を食べ終わるまでの時間が本当に早かった。」と、仲村さんは言います。

同じ内容のコース料理を食べていても、お酒と一緒に料理を味わうのに比べると食事の時間が半分になってしまうことも。

 食べているものは同じだから、おなかはいっぱいだけど、どこかに感じる黙食の物足りなさを深掘りすると、共に席を並べる人との会話や、料理から土地や季節に想いを馳せる余韻、新たな出会いや発見、機微を読み提供される食事の間合いなど、多くの要素が食事を豊かに彩っていたことに気づかされます。

 緊急事態宣言が解除されて、「コロナ禍も何とか過ごしたけど、外に飲みに来るとやっぱり違うね。」というお客の声に、外食が果たす役割を再確認しました。

 

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 コロナ終息後も、出張や転勤が少なくなることが予測されるこれからの社会。

 「地元と繋がる原点回帰で、外に飲みに出掛けることが魅力に感じて貰えるように!お客様により愛される店を築いていきたい。」と仲村さん。

 最後に、街がにぎわう年末に向けて魚魚一のおすすめを尋ねると、「寒くなってきたので、地の魚を使ったあたたかい料理を日本酒と合わせてみて欲しい」とのこと。

 コースに合わせて燗酒の温度帯を変えて飲み比べるのも面白いと教えてくれました。

【魚魚一】https://www.totoichi.com/

(文・写真)浜松・浜名湖観光ライター ジャンク板村

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