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浜名湖の新しいエンターテイメント「インスタライブ競り」をご紹介!

2020.08.20

「『えびすき漁』ってどんな漁なんですか。」

生まれも育ちも磐田市である私は、浜名湖の伝統あるこの漁法を恥ずかしながら今まで知らなかった。

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※漁に出かける黒田さん

「えびすき漁はたきや漁の一種で、浜名湖で昔から行われている伝統漁法なんだよ。」

 教えてくれたのは、若手ながら漁船「極漁丸(きょくりょうまる)」の船長としてえびすき漁を行っている黒田武大(くろだたけひろ)さんだ。近年、あさりの不漁などの影響もあり年々数が減っている浜名湖の漁師。黒田さんは若手漁師からなる「浜名湖次世代会」を立ち上げ、この現状を打破すべく様々な革新的な活動を行っている。

 えびすき漁が行われるのは夜。満潮から干潮にかけて浜名湖の水が遠州灘に向かって勢いよく流れ出す時間帯だ。弁天島の橋脚に船を固定し、引き潮に乗って流れ出す海の生き物たちを網ですくうという当地の伝統漁法である。獲れるのは、「えびすき漁」の名に違わず、奥浜名湖で大きく育った天然のクルマエビをはじめ、希少なドウマンガニやワタリガニ、シタビラメやタコ、スズキなど。

 元々は漁師の専門漁であったものを、一般のお客さまにも体験していただける観光コンテンツとしてもPRしている。好奇心旺盛な子供たちは言わずもがな、大人たちも童心にかえって楽しむことができる、当地としても重要な観光コンテンツのひとつと言える。

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※昨年のえびすき漁の様子

 しかし今、この伝統あるえびすき漁はかつてない苦境に立たされている。先に述べた当地の漁師の減少に加え、各地で猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響を受け、屋外でのアクティビティであるえびすき漁についても、観光目的としたお客様を同乗させての運用を本年中は中止することとなったのだ。

 この決定が、えびすき漁師たちへ大きな打撃を与えたことは言うまでもない。黒田さんもその一人だ。浜名湖次世代会を中心にさらに多くの方へえびすき漁を楽しんでいただくべく、より大人数で乗船できる船を新調していたところに、この決定である。観光客を増やすどころか、えびすき漁自体の存続も危うい状況となってしまった。

 しかし、この状況でも黒田さんは前を向く。「今だからこそ、できることは何なのか」。漁業だけでなく、あらゆる業種でなかなか答えが見つからないこの問題に、正面から立ち向かっている。

 まず力を入れたのは、SNSを活用したPR活動である。ホームページでは、えびすき漁の歴史などを学ぶことができ、実際の予約まで完了することができる。YouTubeでは、獲った魚の捌き方のコツや料理の手順などを提供している。そしてInstagramでは、さらに革新的な活動を展開している。

 それは、全国的なステイホーム風潮の流れの中で再注目されるようになったInstagramの機能の一つであるライブ機能を使って展開しているインスタライブ上の「競り」で、通称”ギョギョ市”と呼ばれている。

 「競り」というのは、いわゆる市場などでよく見かけるあの競りである。一般的には、業者がその日獲れたものを仕入れるため、金額を提示し合い競り落とす。黒田さんが仕掛けるのは、この競りを一般の人も体験できる仕組みだ。

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※Instagramでのギョギョ市の告知

 ここでは、主催者である黒田さん(@kyokuryomaru)とお客様(フォロワー)が直接つながる場が提供されている。黒田さんは、ライブ上で品目ごとに競りにかけ、フォロワーさんは、時間内に金額をコメントすることで競りに参加する。家に居ながらにして、市場で競りに参加している雰囲気を味わうことができ、そして競り落と

 したものは新鮮な状態で郵送してもらえるのだ。このギョギョ市は毎週日曜日に開催され、毎回50人近く参加者がいるとのことから人気の高さがうかがえる。

 この話を教えていただいた私は早速参加してみることにした。

 朝9時、楽しみにしていたギョギョ市がスタートした。競りに参加した経験はなかったが、開始から2、3品目の流れを見ているとほぼやり方は理解できた。そして、事前に公開されている出品リストから競り落とそうと考えていたクルマエビの順番が来た。制限時間は1分30秒。競りが始まった。黒田さんとその仲間たちの威勢の良い掛け声が画面の向こうから聞こえる。数人がすでにコメント欄に希望金額を入れている。遅れをとるまいと私も金額を入れる。何回か金額の攻防を繰り広げ、終盤に差し掛かる。競り落とすには、最後の金額を入れるタイミングが重要だということは2、3回の予習から学んでいた。最後の金額を送信したところで、終了の鐘が鳴った。

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※タイムキーパーをする黒田さん

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※競りに出品されるカニ

「〇〇さん、おめでとうございます!」

 なんとか目当てのクルマエビを競り落とすことができた私は、続くシタビラメ、カニもゲットし、満足して携帯を置いた。

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※同日、競り落としたカニ

 翌日、競り落としたものたちは早速我が家の食卓に並んだ。クルマエビは、次の日も天丼に姿を変え、私のお腹を満たしてくれた。

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※蒸したカニ

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※競り落としたシタビラメで作ったムニエル

 今は残念ながら、実際にえびすき漁を体験することはできない。しかし、この競り体験もまた、新たな浜名湖の魅力的なコンテンツのひとつとして人気が高まるにちがいない。そして、この事態が収束した時には、今までよりもパワーアップしたかたちで、浜名湖の魅力を皆様に提供されるだろう。

 その日を楽しみに、私たちは浜名湖の漁業の新たな担い手として現れた若武者たちを、浜松・浜名湖地域としてぜひ応援していきたい。伝統を継承し、かつそれを新しいものに変えていくのは簡単なことではない。

 この記事を最後まで読んでいただいた皆様には、とにもかくにもまず、Instagramのアカウントを取得し、ぜひ「ギョギョ市」を体験していただきたい。自分が浜名湖のファンとなることからすべては始まるのだ。

 

極漁丸HP:https://kyokuryoumaru.com/

Instagram:https://www.instagram.com/kyokuryomaru/?igshid=1b9kncafestf3

Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCjarmfCey0qfTRj60qacYWQ

編集部:三宅崇介

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