Home > 森町の「アートファームで」創作森焼陶芸に挑戦!
陶芸といえば、お皿や茶碗、壷などが思い浮かぶけれど、この土と火の芸術世界から生まれるのは、器だけとは限りません。森町で『アートファーム』という創作陶芸工房を営む仲田ご夫妻が、自由な発想で産み出すのは、戦国武将やかぐや姫、黒人ジャズマンなどの陶人形。それらはどれも、驚くほど精緻であると同時に、つくり手の人柄と土の優しさをうつして、あたたかく、ユーモアとペーソスがあり、見飽きない味わいがあります。
今回、だいすき隊が突撃したのは、アートファームが開催している陶芸体験教室。ていねいで楽しい仲田ご夫妻の指導を受けながら、外の寒さも嫌なことも何もかも忘れて土をいじっていると、3時間があっという間に過ぎ、手元にはこの世でただひとつのオリジナル作品が。何か趣味を見つけたいという方、俗世と雑事に疲れた方に、おすすめです。
「なんで私なの?無理だってば!」
創作陶芸という今回の突撃テーマを聞いて、出動を要請した私に、A隊員は即座に抵抗をしめした。
「人形?私に人形なんか作れっこないじゃない」。
コーヒーカップを作った陶芸体験やそば打ち体験で、見事なぶきっちょぶりを発揮してくれているA隊員は、人形をつくると聞いてますます激しく抵抗する。
実はA隊員は、自身が人形になったことがあるのだ。といっても、ワラ人形になって木に打ちつけられたわけではない。ラジオのパーソナリティをつとめるそのキャラクターを売り出そうという話が起こり、小さな縫いぐるみ人形が作られたのだ。1個や2個の話ではない。量産されたのである。私もMちゃん(A隊員の名前)人形を義理でもらってあげたのだが、邪険にあつかうと呪われそうで、捨てるに捨てられず、いまは魔よけとして部屋に隅に置いてある。
『私がぶきっちょなの知ってるでしょ。4歳の姪の方がうまいんだから」
人形になれるが、人形は作れないらしいA隊員は、なかなか承諾しない。私は食い下がった。
「あのね、あなたができれば、誰でもできるという証拠になるでしょ。世の中の道標になって欲しいのよ。それに、Mちゃん人形もらってあげたじゃない。私には借りがあるんじゃない?」
「わかった。やるやる。」
素直ないいヤツなのだ。ちなみにA隊員、いまだハナムコ募集中である。ぶきっちょだが、料理はうまい。
「昨日は緊張して、あまり眠れなかった。本当に作れるかな」
日差しは春をうたうのに、まだまだ冷え込みが厳しい2月末のある日、カメラマン役で参加のS隊員の運転で森町へ向かう車中、万人の標となる使命を担ったA隊員は不安顔だ。
浜松から40分ほどで、目的地の『アートファーム』に到着。大きな木の看板と、畑や田んぼに囲まれたのどかな道沿いにある家の前に並べられた仲田さんご夫妻の作品が目印になる。庭にもさまざまな陶人形が並び、まるで屋外ギャラリー。ふくろう、猫、小鳥――。どれもみな表情が豊かで、足をとめて見入らずにいられない不思議な引力がある。
しかし、魅せられる一方で、不安もつのる。
「ねえねえ。今日はこういう人形をつくるのかなあ。すごく難しそう」
私が思っていることを口にしたのはA隊員。そうなのだ。たしかに難しそうだ。
アートファームの看板です。
かわいい。猫が。
庭にも作品がずらり。
屋内ギャラリーには、代表作の戦国武将シリーズなどが
「ようこそ。」と、庭の人形をのぞきこんでいる我々に声をかけてくれたのは、人形たちのつくり手、仲田康生さんだ。「こちらにも作品があるんですよ。どうぞ、みてください。」
案内された屋内ギャラリーにズラリと並ぶのは、徳川家康、織田信長、上杉謙信など、戦国の世のヒーローたち。お顔は愛嬌があるが、甲冑や兜の細工はとても細かい。この戦国武将の陶人形シリーズは、仲田さんの創作陶人形の代表作。戦国武将の顔を、自分の顔にして作ってもらうことも可能で、著名な政治家からのオーダーがあったそう。子供さんのお顔に似せた武将人形も、初節句の祝いとして人気があるそうだ。
山頭火シリーズのお香立て。焼き魚からのぼる煙はお香。
ニューオリンズに旅行したときにインスパイアされ生まれたジャズマンシリーズも、ひとつひとつに存在感がある。山頭火シリーズは、山頭火が焼魚を焼く火鉢の下にお香を置くお香立てになっていて、魚の煙が香るというアイデアが秀逸。その他にも、森の石松の焼酎サーバーなど、インテリアだけではなく、実用性も兼ねた多彩な作品がある。
ヨーロッパには、スペインのリアドロなど、磁器=ポーセリン人形の老舗ブランドがあり、典雅な美しさが愛されているが、仲田さんが創る陶人形は、日本的で土の温かみと、郷愁を誘う風情がある。そして、何より魅力なのは、温かく、優しく、可愛いく、ユーモラスで、どこか哀愁漂う表情だ。
「自分で言うのは少し恥ずかしいが、私は男の孤独感にひかれるんですよ。山頭火なんて、まさにさすらう孤独の人でしょう。スポットライトを浴びている人より、場末のバーをどさ周りしているジャズマンとか。そういう人たちが醸しだすものにひかれるんです。」
人形の表情に心引きつけられるのは、そこに心が宿っているからだろう。
こちらは奥様先生の作品。女性らしい。
ジャズマン。表情が素晴らしい
今日はこの茶香炉をつくります
先生はA隊員をマンツーマン指導
と、感心している場合ではいけないのである。作品を鑑賞するだけが、今回の突撃テーマではない。作品を作らなくてはならないのだ。創作陶芸というテーマは把握しているが、われわれは実際に何をつくるのかまだ聞かされていない。まさか、この武将たちを作るのか・・・。
「あの、今日は、この武将を作るんでしょうか」
またしても私が思っていたことを、不安に押しつぶされそうなのか、A隊員が蚊の鳴くようなで仲田さんに聞く。
「いえいえ。今日はもっと簡単なものを作ってもらいますよ。ウチの体験教室のモットーは、楽しんで作るということですから」
「楽しむ?苦しむんじゃなくて、楽しむんですね。私、楽しみたいです。先生。どんな結果になろうとも、楽しみます!」
A隊員のいきなりの気迫溢れる“楽しみたい宣言”に、笑顔をみせる仲田先生。仲田先生は、A隊員のすさまじいぶきっちょぶりを、このときはまだ知らないのであった。
敷地の奥の工房で迎えてくれたのは、愛犬ビビちゃんと、奥様であり、やはり陶芸作家でもある仲田真代さん。奥様先生は、私たちの陶芸体験の下準備を進めてくれている。
「さて」と、だいすき隊が大きな机に置かれた手動ロクロの席に着いたところで、先生が言う。いよいよ、何を作るかが発表されるのだ。頭の中でドラムロールが鳴る。
「今日は、みなさんの前にある、この『ふくろうの茶香炉』を作ってもらいます」
「えええええー!」驚くだいすき隊。
「こんな難しそうなのを?」と私。「無理!」と再びA隊員もネガティブになる。
「大丈夫。簡単だから。」と先生。
「だって、その葉っぱとかも作るんですよね。無理無理絶対無理!」
「大丈夫。本当に簡単だから、心配ないですよ。いまからどんなに大丈夫か説明しますから。」
先生の口調は、まるでバンジージャンプ体験に来たけれど、いざとなって脅えてしまった人を説得するようだ。
「まず、筒を作りますが、すでに粘土を板状にしたものを作ってあります。底の板も、お茶っ葉を乗せる上皿も、キャンドルを乗せるお皿も、だいたい作ってあります。筒を作るのも簡単です。この釉薬が入っていたボトルに巻き付けて形をつくって、底になる板をくっつけて切り取ればいいんですよ」
「要は組み立てる作業をすればいいんですね。」A隊員の表情がいくぶん明るくなる。
「その通り。筒ができたら、ふくろうをつくり、木の枝や葉を自由にアレンジします。葉は、型抜きで抜けばいい。簡単です。枝や葉を飾りつけたら、ふくろうをくり抜いた窓において出来上がりです。」

ボトルに板を巻き付け
それぞれの前に、奥様先生がつくっておいてくれた板が置かれ、いよいよ作業開始。最初は奥様先生が手順を説明してくれる。
「まず、このボトルに、板をぐるりと巻き付けてください」。
後ではがしやすいように新聞紙が巻かれたボトルを、板の上にのせてコロリと1回転させる。1周させて重なったところに縦にカッターを入れて余分な粘土を切り取り、さらにつなぎ目となる面をそれぞれ45度の角度でカッターを入れ、水に濡らしたハブラシで両方の断面をゴシゴシとこすって表面を泥状にする。その泥が接着剤となって、断面がくっつくのだ。
筒ができたら、同じ要領で底板をつけてロクロの上に置いて回しながらカッター
で丸く切り取り、筒全体の表面をヘラでなめらかにしていく。
ここまで、私の作業に淀みはない。表面にスのような小さな穴が開いているのをみつけて、指先を濡らして粘土を少量とって穴を修復するという、先生の指示以外のことまでやってしまう余裕さえある。
自分の手で、無から形を生み出していく作業は楽しく、私は粘土いじりに没頭した。 “境地”と言えばいいのだろうか。そこには、余計なことをいっさい排した、ピュアな意志の世界があるのだった。
ハブラシでこすって泥をつくる。
それが接着剤になる
そこ板もこする
その上に乗せればくっつくのだ
ロクロをまわしてカッターで切り取る。けっこう難しい
「上へ上へ」
「え?え?どうしてえ?あれえ?」
安らかで静寂なる私の美しき創作世界をぶち壊したのは、隣で筒づくりに悪戦苦闘しているA隊員の声だった。ボトルに巻き付けるときから「えっと、海苔巻きみたいにすればいいのよね」だの、「えっと、こうしてこうしてゴロゴロゴロ」だの、擬音や比喩でいちいち作業内容を言葉にないと手を動かせないのか、さっきから隣でうるさかったのだが、早くも危機に直面したらしい。
「あ、そんなに力入れちゃダメ!」
A隊員をマンツーマンでずっと指導している先生の声もせっぱつまっている。どうやらA隊員の筒は、表面がボコボコになっているらしい。
「あ、もっとそっと持ち上げて。そっとやってそっと。いまの力の半分くらいでやって」。
どんな力技を出しているのだろうか。
「仕方ないで、そこは私がやってやるで。上げ膳据え膳だね、こりゃ」。苦笑する先生。A隊員の脅威のぶきっちょぶりに驚いているようだが、「こんなもんじゃないんですよー」と私は心の中で独りごちる。
力技
「板を丸く切るときは、ロクロをまわすの。そうやって自分がまわるとダサい」
「底板を筒になじませるときは、泥を上にもっていくように。」
次から次に、先生の指示が飛ぶ。
「上へ・・・上へ・・・」とA隊員。
「ぶははは」。吹き出す私。A隊員は、そば打ち体験でも、手を動かす方向をいちいち言葉にしていたのをおもい出したのだ。
しまいには、「先生、ここはいびつでもいいんですよね」と、強引にOKをもらおうとして、「だめだよ」とあっさりダメ出しを受けたA隊員であったが、なんとか、筒は完成したようだ。
「では、これから釉薬の容器をはずしますよ。粘土をそっとおさえながら、ボトルをもってゆっくり回転させて」。奥様先生の言葉通りにすると、するりとボトルが抜けた。
隣では、「抜けない抜けない」と、さわいでいる。
と、ポンという音。
「あ、ボトルの蓋が開いちゃった!」
A隊員は、ボトルのキャップを持って回転させたために、筒は抜けずにフタだけが開いてしまったのだった。
「コントか!」つっこむ私。
「えらい、ひょんきんだなあ」と、これには先生も爆笑なのだった。
キャップを外すの図
もう3人がかり
こちらエステ前
こちらはエステ後のお肌
抜けたら、歯医者さんが歯垢を削るときに使う金属の細いメスで、つなぎ目のところにキャンドルを出し入れするための口を、その反対の正面に、ふくろうを乗せる丸い窓を開ける。形がくずれないように、筒の中に指入れて、裏側をサポートしながら、ゆっくり切り取り、断面をなめした皮に水を含ませて滑らかにして、茶香炉づくり第一部は終了だ。
「私たちの教室は、中身が濃いのでけっこう評判なんですよ。やることが多くて大変でもありますけど。でも、この茶香炉つくり、粘土の板をつくるところからすべて自分でやると5時間くらいかかるんですよ」と奥様先生。
ここまで、約40分。しかし、集中していたせいか、そんなに時間が経った気がしない。
出来上がった筒を見て、「わあ、T隊員(私のことだ)の、すごくなめらか〜」とA隊員。「こっちはえらいデコボコだ。傷だらけの人生だね」。これは、A隊員の筒を評した先生の言葉。
「エステ前とエステ後って感じよね」しょげるA隊員に、先生は言う。
「いいんですよ。さっき言ったように、楽しんでもらうのが大事。ヘタでも自分らしさが出ればいい。粘土だから、失敗してもなんとかなるし、難しいところは手伝うし。その加減が難しいんだけどね。あまりやりすぎると、その人の作品ではなくなって、僕の作品になっちゃうから。今日はちょっとやりすぎかなあ・・・」。
A隊員には、いつもより多く手を出さざるを得なかったに違いないが、それでよかったのだろうかと葛藤。A隊員、罪である。
先生がていねいに教えてくれるけど
雫になりません
この違い・・・
「さて、ここから楽しい楽しいふくろうづくりをしますよ」。
奥様先生は、次の工程で使う粘土のヒモや板の準備にまわり、ここから指南役となった仲田先生が言う。
作るのは小さいふくろうだが、これも立派な陶人形。いよいよ、今日のメインイベントのはじまりだ。だいすき隊は、ゆるんだ集中を再び高めて、粘土と向き合った。
「手の平で粘土を丸めてうずらの卵くらいの球を作ってください」と先生。「ほら、これくらいの大きさですよ」。目の前で見本を見せてくれるので、わかりやすい。
「次に手の平の小指の方をすぼめて、その中で球を転がして、球の半分を少しすぼめるような感じにしてください」。
先生の手の平をみると、球の半分か円錐形に少し伸びて、先端の丸さは残したまま雫のような形になっている。手の平の下の方で、そっと球をころがすと、私の粘土も先生と同じ形になった。
「あれえ、できないよお」。隣でA隊員はもちろんパニック。
「こう動かすんだよ、こう」。私も見かねて見本を示しながらアドバイス。
「こう?こう?」
もぞもぞと手を動かして開いてみると、なぜか粘土は、円盤形に。
「わはははは。」と、先生も楽しそう。やはりA隊員を連れてきてよかった。
A隊員、雫づくり繰り返し、「なんで、同じことをしてるのに、違う形になるのよ!」と怒りはじめたが、5回目になんとか雫形に。人間諦めずに続ければ、どんなことでも克服できることを、身をもって示してくれた。
雫形の粘土の細い方がふくろうの頭。そこに指でふたつのくぼみをつけ、ダイズくらいの大きさの粘土団子をつくりそれをA隊員得意の円盤形につぶして、くぼみをハブラシでこすってつけると、目ができる。
丸い型で目に線をひき、竹串の平らな方の先端を押しつけて目玉をいれると、だいぶふくろうらしくなってきた。と、「あ」とA隊員。今度は何事かと思ったら、
「あ、かわいい!かわいくない?かわいいよね。やはり作者に似るんだわ。見てちょっと私の子。かわいいかわいい。あなたのより私の子の方がかわいい」
無邪気さは、ときに図々しく、無神経である。
目ができたら、次は、クチバシ。ご飯粒くらいの粘土を丸くして少し細く縒って、先端を目の下に刺すようにつけて形を整える。触覚のような頭のはねも、同じ要領。羽も足も、粘土を丸めてから、形を整えてつくる。
目をいれる
「私の方がかわいい」とA隊員
指先で団子がつくれません
「ちょっとちょっと」。再び先生がせっぱつまった声を出した。「そんな小さいのは指先で丸めればいいんですよ」。
A隊員は、クチバシにするご飯粒大の団子粘土も、手の平でまるめようとしている。
「え?指先で?」
「こうじゃない?」私が見本を見せる、「そうかあ」と、A隊員も指先を動かした。だが、丸まらない。「指がまわらない。できない。先生、これができない人、いますか」
「いません」。先生、即答。
「なにが違うの?なんでできないの?」
それは私が聞きたい。
「ううむ。この動作は、陶芸の基本なんですがね。脳にとっても大事なんですよ。右脳を使う作業ですから、毎日やるとボケ防止にもなるんです。できないということは、ちょっと心配だなあ」
「えええ〜?私、ボケはじめてるのかなあ」
「とにかく毎日やった方がいいですよ」
最近、脳ドックなるものが流行っているらしいが、陶芸ドックもおすすめである。
羽、足をつけて、竹串で羽の毛並みを描くと、小さなふくろうの出来上がり。まったく同じ工程でつくったのに、2つのふくろうは、粘土とはいえ個性を宿している。言うまでもなく、世界でたったひとつの“メイドイン私”のふくろう。手の平に乗っけて眺めると、かわいいだけではなく、愛しく思えてくる。
「なんか、愛しいね。愛情わいてくるよね」。A隊員が、またしても私の心の内を言葉にした。
ふくろうができたら、それを窓に乗せる前に、筒に木の枝と葉をつけていく。
まずは枝。奥様先生がつくってくれた紐に、鋸で木肌の筋をつけひねって表情を出し、紐を縦半分に割る。葉の型は、和菓子職人が使うもの。粘土板を抜いたら竹串で葉脈を描き、指先で淵を少しおして丸みを出す。そうして、粘土を水にドロドロに溶いた『ヌタ』を接着剤にして、枝、葉の順でおもうままにペタペタと貼り、ふくろうが住む森をつくっていくのだ。
無言で没頭するだいすき隊。枝ぶりや葉をつける位置など、森のデザインを考えながらの作業が楽しい。
葉はあらかじめたくさんつくっておく
竹串で葉脈をかつ
裏にヌタをつける
思い思いにはっていく
森ができたら、ふくろうを窓のヘリにつけ、キャンドルを乗せるリーフ型の小さいトレイと、お茶の葉を乗せる上のトレイをつくり、それぞれに枝と葉を持ち手としてつければ、全工程終了。ふくろうの茶香炉の出来上がりである。
「ふう〜っ。」
トレイに最後の葉の一枚をつけ終わって、精根尽き果てた私。
「できたあ〜」。となりでA隊員ものびをする。手元には、立派な茶香炉がある。
「ああ〜よかった。先生のおかげでなんとかできました。できるかどうかホントに心配だったんです〜」。涙目である。
本体が完成
上皿はこんな感じです
世界にたったひとつの茶香炉なのだ
できたあ!
時計をみれば、作業台の前に座って約3時間後の数字をさしている。
「え?もうそんな時間?」とA隊員。時間があっという間に過ぎたのは、それだけ集中していたからだろう。何もかも忘れて土と格闘した180分。心に満ちるのは、疲労感というよりも充実感に近い。
仕事を終えて、自分がつくった作品をしみじみ眺める。私は茶香炉が大好き。自分でつくった香炉で炊くお茶の香りは格別だろう。A隊員は、コレクションしているアロマオイルをトレイにたらせば、アロマポットとしても使えると先生から聞いて喜んでいる。
香炉の後ろに、自分の名前と日付を竹串で堀り入れた作品は、このあと乾燥させてから素焼きされ、釉薬をかけて、再び焼かれて完成となる。その釉薬がけ、つまり色つけも、体験者にやらせてくれるのも、アートファームの体験教室の特徴。素焼きが終ったら体験者に連絡をいれて、もう一度工房にきてもらうのだそうだ。
形づくりと色つけの両方を体験させてくれる工房はなかなかない。
体験教室のコースは、茶香炉の他に7種類。茶香炉には、キャンドルと、茶香炉用のお茶をつけてくれる。
先生ありがとうございました
実際に自分で創作陶芸をつくってから、仲田先生の作品をみると、その素晴らしさが倍増する。
仲田さんは陶芸を初めてまだ7年というから、驚く。
「45歳のときに、50歳になったらサラリーマンをやめて、自分の好きなことをしにうと決心して、少しずつ女房をくどいたんですよ」
何をやるか決めていなかった仲田さん。創作陶芸に出会ったのは、奥様が陶芸をしていたことがきっかけ。ステンドグラスなど、いろいろなものをひと通りやってみたけれどピンとこなかった仲田さんだが、粘土で自由な発想でものをつくる創作世界に出会うや、たちまちにのめりこんだそうだ。
会社員時代は、建築関係の設計に携わっていので、3次元世界は得意。失敗しても、粘土だったら何度でもらやり直せるところも、魅力だった。
「焼き物としては邪道という方もいるけれど、僕は、器づくりよりも、この陶人形つくり、創作陶芸の方がはるかに面白さがあると思います。自由ですからね。自由に発想をして、作れる。逆にいえば、発想が大事。感性が大事なんです。だから、体験教室に来た方にも、どんどん自分の感覚やアイデアや思いを出してもらいます。基本的なつくり方を覚えたら、どんどんアレンジしていってほしいんですよ」。
仲田さんの作品に、なぜ思わず見入ってしまうのか。その理由がわかったような気がしたのであった。
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