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昨年の11月、静岡で開催された『世界お茶まつり2007』の『第一回世界緑茶コンテスト』で、出品総数219品(うち日本から129品)の中から選ばれた20の最高金賞のなかに、春野のお茶が2つ入りました。お茶処というイメージがない浜松ですが、北部の春野は、静岡県でも有数のおいしいお茶が育つ茶産地。その美しい自然をいかしながら、365日お茶づくりに励み、快挙を成し遂げたお2人が、今月の元気人です。
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世界緑茶コンテストに応募した思いから聞かせてください。

向島さん

栗崎さん
向島さんお茶の品評会は、県や日本などいろいろな規模であるんですが、ずっと出品してきているんです。今回は、世界中から緑茶が集まるということで、そのなかで、僕らのお茶がどのレベルにあるのかなと、冒険する気持ちもありました。
栗崎さん私も同じです。品評会は、自分のお茶を認めてもらうチャンスなんです。今回はせっかく静岡で世界のコンテストが行われるのだから、やってみようと。春野には茶振興協議会という団体があって、そこが春野の茶園のなかから、今年はここがこの品評会に出すというのをいろいろコーディネートしてくれていて、音頭をとってもらったというのもあります。
向島さん振興協議会から、去年は僕らと栗崎くんのところに声をかかったんです。
受賞を知ったときは?
栗崎さん本当にびっくりしました。まさか、という感じです。
向島さんもともと、春野はすごくいいお茶がとれるところなんです。ここのところ品評会で毎年いいところまでいくようになってきていたから、もしかしたら上位になって電話が来るかなというのは、ほんの少しだけありました(笑)。でも、最高金賞がとれるとは、まったく思っていませんでしたよ。
栗崎さん最高金賞の20品の中の9品が日本のお茶で、春野からは、私と向島さんのところと2つ出して、その2点とも入ったというのが嬉しかった。それに、外国人審査員が、その9品の中からさらに特別賞を3つ選んだんですが、その中にも2つとも入ったんですよ。
向島さんそれは誇りですね。
栗崎さん特別賞に2つとも入ったというのがね。あとひとつの特別賞は、岡部の玉露でした。
それはすごいですね。春野は、いいお茶がとれるということですが、なぜなのでしょうか。
栗崎さんまずは、気候条件がいい。朝と夜の寒暖差が大きいということ。それから、気田川から朝霧が立ちこめて、日光を適度に遮光することで、半玉露のようないい茶葉が育つんです。山の斜面に畑があり、水ハケが非常にいいことも良質のお茶が育つ理由です。
向島さんそれに、土壌もいい。土自体がお茶に適しています。このあたりの茶産地としては、川根茶が昔から有名ですよね。あと、天竜茶も知られています。ここは、ちょうど川根と天竜の中間になるんですが、私は春野には、川根のいいところと天竜のいいところがあるのではないかと思っているんですよ。
味はどういう特徴があるんですか?
栗崎さん春野のお茶は、うまみとコクが濃厚です。それから、煎がきく。2煎目、3煎目もおいしく楽しめる。川根より煎がきく感じはしますね。
向島さんそうだね。煎がきくということは、要は味が強いということ。
栗崎さん強いですね。香りも強い。
向島さん風味が強いから、新茶の時期にすぐ飲むよりも、すこし時間をおいた方がまろやかで飲みやすいという人もいますよね。たしかに、春野のお茶の良さが増すかもしれないね。

少し寝かせて熟成した秋のお茶を“蔵出茶”などといいますね。
栗崎さんそうです。夏を越すと、また新茶の味が戻ってくるという言い方もします。
向島さん極端な話、去年の新茶を今の時期に飲むといいんですよ。味が強いところまろやかになる。うまく熟成されて、悪いところが全部飛んでうまみに変わってくるんです。春野のお茶って、そういう特徴かあるお茶かなあと思いますね。
栗崎さんちょっと飲んでみてください。いま、品評会のお茶を淹れますから。どうぞ。すぐにゴクっと飲まないで、舌の上で転がすようにして味わってみてください。
すごくおいしいですね。風味が濃厚でまるで玉露のようですが、さっぱりしています。
向島さん玉露というお茶は、新芽が伸びてきたら上にコモをかけて日光を遮ってつくります。独特の風味のお茶ですよね。
栗崎さんこれも、少しコモをかけて育てています。収穫のときには、春先に芽吹いて伸びた新芽を一芯二葉という状態で摘むんです。新芽の上の5センチの部分ですね。新芽のひと葉ひと葉にカードをあてて長さを図って、親指とひと差し指の腹の間にはさんで、自然に折れるようにして摘み取っています。
ひとつとったらビクと呼んでいるカゴに入れて、また長さを計ってとってカゴに入れる。だから、一人1日多くて500くらいしか摘めません。
向島さん1時間でビクの底が隠れるくらいのペースだね。とにかく丁寧にとらないといけない。摘み方も味に影響しますからね。茶摘みのときは、百人くらいでいっせいに摘みます。ほとんど地元の人だけど、なかには浜松から来てくれる人もいますよ。
栗崎さん茶振興協議会でお茶摘みさんを用意してくれるんです。いろんな人の協力があってできたお茶ですね。
向島さんそうだね。そうやって、短時間で摘み取りをして、すぐにお茶に揉み上げることも、おいしいお茶を作るに大事なこと。摘み取ってから時間をおくと鮮度が落ちてしまうから。
栗崎さん1年間の365日の栽培管理と、摘みとりのやり方と、製茶。三位一体でうまくできないと、いいお茶はできませんね。
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揉み上げるところで、大変だったことは?
向島さん普通は製茶するときは、もう少し大きい機械を使うんですが、出品したお茶は、時間をかけて、小さな機械で揉んでいます。使う葉は、一般に販売するお茶と同じですけど、いつもの3倍くらい時間をかけて作っています。
栗崎さん摘み取った生葉をお茶にするまでに、蒸しに始まっていろいろな工程があるけど、すべてにおいてこだわってますね。
向島さんなかでも難しいのは“蒸し”です。蒸かし過ぎてしまうと、春野のお茶の良さが出ない。
栗崎さんこのお茶は、蒸しにあまり時間をかけない浅蒸しです。それも極端な浅蒸しですね。
向島さんそうしないと、香気が逃げてしまうし、形も悪くなる。でも、浅すぎても青臭くなってしまう。
栗崎さん難しいところですね。
向島さん蒸しは18秒とか、僕らにすれば一瞬の勝負。
栗崎さん蒸しの機械に入って出るまでが18秒。普通は30秒。深蒸し煎茶だと、90秒から120秒くらいです。
向島さん乾かして形を作る工程でも、温度を上げずに無理に乾かさない。
栗崎さん精揉機という機械にかけるんですが、普通なら1時間くらいのところを4時間半かけました。本当にゆっくりと揉んでいくんですよね。
向島さん普通は熱と風をあてるけど、風はあてずにやる揉む。品評会では、茶葉の形も大事なんです。テリがあるかとか、しっかり剣先がのびているかとか、外観でも評価されるんですよ。
栗崎さん品評会のお茶づくりは、長丁場ですね。朝8時くらいから摘み始めて、蒸しに入るのが午前11時頃。出来上がるのは夜中の2時とか3時。
向島さんやりがいはあるが、体がえらい(笑)。
栗崎さんなるべく自然のままに育てて作りたいから、僕たちは品評会のお茶であっても、早出しをしないでしょう。無理にコモをかけて温室化して、早く目を出させて品評会のお茶を早めに作ってしまえば、そのあと、普通に売るお茶を作る作業が楽だけど、僕は、そういうことをやらないのも、品評会で評価された理由なのではないかと思いますね。本当に体は大変ですけどね。自然に任せてやっているというところが、味の違いに出ているのかなと最近は思います。
向島さんうん。無理矢理やると、やはりお茶の質は落ちる。野菜と同じで味が乗ってこないしね。
向島さん昔から茶摘みは八十八夜というけど、なぜかというと、その頃摘むと季節感が出るんですよ。新茶のおいしさというのは、飲んでいて季節の味がするからなんです。それがどういう味かというのは、言葉では説明できないですがね。
栗崎さんお茶の樹も、その頃に摘んで下さいよって言ってくるんですよね。
ご自身で、満足いく出来でしたか?
栗崎さんまあ、なんとかいいお茶が出来たと思います。
向島さん去年は、天候的には難しいところがありましたが、おいしく出来たと思いますね。
栗崎さんちなみに、いま召し上がってもらったお茶は、100グラム4万1千円です。
向島さんご祝儀とかがついたので、その値段になったんですがね。まあ、僕らでも飲めません(笑)。
お茶づくりの楽しいところは?
向島さんお茶の樹は一生懸命に面倒をみれば、それに応えてくれます。そこが面白いですね。私の茶園は春野の一番山奥で寒さが厳しいから余計に気を使わなくてはいけないが、うまくできたときのうれしさは格別ですよ。毎朝、起きてすぐに私は茶園を見てまわるんですが、お茶の樹が、「お腹すいた」とか、「水がほしい」とか言ってくるんですね。お茶と話ができるという楽しみもあります。それと、天候が相手だから、どうにもならないときもあるけど、それも面白さかな。毎日、太陽のありがたさをすごく感じながら暮していますよ。たまには、都会も恋しいけどね。
栗崎さんあれ、おかしいなあ。電話してもいつもいないでしょう。ネオンのもとにいるんじゃないかと思うけどなあ(笑)。たしかに、お茶の樹はかわいいですよね。新芽が出るというのは、子供が生まれるみたいなもの。365日畑を見まわって、芽が出て、徐々に伸びていくのを見るのは、子供の成長を見るのと同じですよ。収穫の喜びは、すごいですよね。
向島さん苦労が全部吹き飛びます。
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茶摘みの様子

受賞茶茶園(はるの逸究園)
こんなにおいしいお茶ができるのに、春野や浜松には、茶処というイメージがないですね。
向島さんそうなんです。もともと本当にいいお茶がとれるところなんですよ。でも、こういう賞をとることによって、徐々に消費者に春野のお茶をアピールできたらと思います。旧の浜松市の人は、春野のお茶ではなく川根のお茶を飲んでいる人が多いけど、いまは同じ浜松のなかにこんなにいい茶産地があるのですから、これらは市内のお茶を飲んでもらえればと思っているんですけどね。そういう思いもあって、品評会に出しているんです。自分のお茶というより、産地を売り出したい。それが目的ですね。
栗崎さんちょっともったいないなと思うのは、せっかく素晴らしいお茶が育つのに、他の葉とブレンドされてしまうことが多いことなんですよね。
向島さん栗崎さんは、自分の畑でとれたものを、自分でお茶にして販売しているんです。私は9人の仲間でやっているんですけど、茶葉はほとんど茶商さんに卸すので、ブレンドされてしまう。でも、私もウチのお茶だけで作ったお茶を売ってもらったりしているんですよ。
栗崎さん知られていないのは、絶対的に量が少ないからですよね。静岡茶の生産量のたしか8%くらいですよね、春野茶は。
向島さんもっと少ないんじゃないかな。北遠地域で5%でしょう。昔は茶畑は350ヘクタールあったけど、高齢化して減っていますね。でも、まだ栗崎くんみたいにやる気のある若い人もいるし、お茶をやっていこうという人もいる。
栗崎さん40歳だから、若くはないだけどね。(笑)。
向島さん北遠では、春野町が一番若い後継者が多い。地形的には山だけど、そんなに急ではないし、機械も使える。僕は、ここはまだまだ将来に夢を持てるところかなと思います。
向島さんも栗崎さんも、代々、お茶農家さんなのですか。
向島さんそうです。小さいころから、親たちがお茶の栽培をしているのを見て育った。大変そうだなと思っていましたよ(笑)。長男ですから継ぐのはわかっていたけど、私は少し勤めに出たんです。お茶の仕上げや販売も経験してからウチに入って、3年くらいかな(笑)。
栗崎さん何を言っているんですか(笑)。歳が全然あわないでしょう。
向島さん本当は、35年くらいです(笑)。
栗崎さんウチは、私で4代目で創業百年以上は経っています。私も親の背中を見て育ったもんで、将来はお茶をやるだなあと思っていたけど、一度も外に出ないのはなんだなと思って、僕も高校を出たあとに東京農大の短期に進みました。そこで作物全般の勉強をして、そのあと国の茶業試験場に2年勤めて春野に帰ってきました。東京では、最初は朝のラッシュ時に山の手線に乗れなくて困りましたよ。乗ったつもりなんだけど、いつの間にか弾き出されてしまう。こんなところ、住むとこじゃないなあと。故郷に帰ってきて、20年間くらいお茶をやっていますけど、いろんな方との交流もあるし、楽しくやれていますよ。
ライバル意識は、ありますか?
向島さんそうですね。いいライバル意識はあるし、持たないといけないと思います。春野には、茶振興協議会ができる前に、茶研究会というのがあった。せっかくおいしい茶葉がとれるんだから、春野のお茶を何とかしたいということで、25年前から品評会に挑戦してきたんです。何とか春野茶の名前を知ってもらおうとみんなで共同で茶園を管理したりして、がんばってきたんですよ。
栗崎さんそうですね。
向島さんみんな意欲があったし、今回の受賞は、みんなの地道な努力が実ったのだと思います。たまたま僕らぼくらがとったということだけて、本当は春野の人がとったということだと思っています。
栗崎さん同感ですね。春野の賞ですね。
向島さんさきほども言いましたが、ここのところ、少しずつだけど山のお茶が見直されてきていて、春野のお茶は茶商さんの間では評判になってきていた。こういう厳しい時代でも、日の目を見るチャンスがあるかなというときに、金賞をとれたというのは大きいと思います。みんなのおかげだし、みんなもこれでまた元気が出るでしょう。だから、この受賞を上手に使いたいですよね。
夢は、春野茶を確立するということですか?
栗崎さんそうですね。なかなか名前が出ないというのが現実ですから。
向島さん春野茶という名前をもっと出していかないといけないね。これからは、春野のお茶を買えるところをもっと作らないといけない。浜松のデパートやスーパー、お茶専門店で、春野のお茶をもっと売ってくれるように、僕らが運動していかないといけません。
栗崎さん僕は浜松のフォルテで開催されている『旬のとれたてバザール』など、月に何度か市街に出向いて行って、イベントで直売もしているんですが、それだけでは知れています。せっかく合併になったんだから、浜松に春野のお茶の専門店みたいなものでもできれば面白いなと思うんですけどね。それから、
春野のお茶ということだけではなく、私は、お茶そのものの良さを、見直してもらいたいと思います。
向島さんそうだね。いまはリーフのお茶を若い人はなかなか飲まないですからね。
栗崎さん僕は、常に茶器セットと茶葉を持ち歩いていて、会議や集まりの席でさっきのようにお茶を淹れてあげたり、自分で飲んだりしているんです。お茶というのはすごく力があって、そうやって淹れていると、人か集まってくる。何だ何だとなって、人の輪ができて、会話が生まれます。会社などでは、いまは一人ひとりがペットボトルのお茶を飲んだりして、お茶を淹れて飲む習慣がなくなってきていると言いますが、それが、人間関係が閉鎖的になってきている理由のひとつという気がするんですよ。
向島さんそうですね。ペットボトルのお茶は、僕からしたらお茶ではない。ジュースを飲むよりはましですけど(笑)。
栗崎さん春野のお茶をたくさんの人に知って欲しいし、春野茶を通じて、リーフで飲むお茶の良さを見直してもらえたらな、と思いますね。
向島さん これからも頑張っていきましょう。
【霧深き山のお茶 春野の精 栗崎園】
静岡県浜松市天竜区春野町宮川537
TEL&FAX:053-989-0756
Email:kurichan@lilac.ocn.ne.jp
HP:http://www.kurisakien.com
ブログ:http://kurisakien.hamazo.tv/
はるの逸究園の春野茶『極濃』
ひしだい製茶(静岡県袋井市高尾町)で販売しています。【ひしだい製茶(株)】
小売部 お茶のしずおか
静岡県袋井市高尾町12-18
TEL:0120-01-4147
http://store.yahoo.co.jp/otyashizuoka/


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